2008年7月26日土曜日

血管の話⑥

認知度の点ではそういうことで広まりましたからいいとして、問題は予防です。
ただその前に話がちょっと飛びますが、血液はどうやって循環しているかを 確認します。

動脈はまあ簡単です。心臓がぎゅっと縮んでその力で体の隅々まで血液が いきわたります。
じゃあ静脈はどうか。今度は逆に体の隅々から心臓にもどっていかなければ なりません。
心臓に駆出力だけでなく吸引力もあればいいのですが、残念 ながらそんな力はないので行きはよいよい帰りは怖いと、なんとか心臓の 力に頼らず帰り着く必要があります。
実際は、静脈血が心臓に戻るために3つの力が知られています。

① 重力:頭にある静脈の血液は重力によって自然と落ちていきます。逆立ちを するとこれがはたらかず、顔がぶわっとなります。

② 胸の(マイナスの)圧力:指の腹を針のない注射器の先端に当ててふさぎ、 注射器を引くと中が陰圧になり指が中に引っ張られます。指を当てないで 引くと当然、空気が入り込みます。同様に横隔膜(*註)が下がると胸の容積が 増えて陰圧になり中に(つまり肺に)空気が入り込みます。これが呼吸の
原理で、逆に横隔膜が上がると空気が出て行きます。
これに伴い血液も動きます。横隔膜が下がると血液が胸に(つまり心臓に) 入り込み、横隔膜が上がると血液は押し出されようとしますが、ここで 唯々諾々と押し流されては今までの苦労が水の泡でして、そうならないため に静脈には弁がここかしこに備わっており、血液の流れを「隅々→心臓」の
一方通行にしています。
ですから腕を振り回しても遠心力で指先に血が 集まってしまうことはありません。ただ血液が弁に押し付けられて停滞し、 ぶわっとなりますけれど。

③ 筋肉ポンプ:足にとって①は(立ってるときは)方向が逆ですし②は遠すぎて ほとんど影響がなく第三の力に頼るほかありません。
筋肉ポンプとは筋肉が血を流すポンプの役目をするという意味です。筋肉が しまると中を通っている静脈が圧迫されて血液が(弁があるため)上に少し 移動します。
次に筋肉が緩んでも弁がありますから下には落ちません。
そしてまた筋肉がしまると、さらに上に移動するといった具合です。
一日中同じ場所に立っていると足がむくみますが、同じく立っていても 歩き回っていればむくまないのは、このためです。

長々と書きましたが、筋肉ポンプのことを知っていれば、なぜエコノミークラスで足に血の塊が出来やすいか理解でき、そうであれば予防法も想像がつくという ものです。
筋肉を使わないことが一番の原因なのですから、まず足を動かすことが大事 です。
それから水分を多くとって血液の濃縮を防ぐということになります。
また、いわゆる「血液をさらさらにする薬」というのもありますから 持病を持っている方は、主治医に相談されるといいと思います。
しかし世間には 「血液をさらさらにするといってだます詐欺」もあるようですので、怪しげなものには注意が必要です。

註:横隔膜=胸とおなかの境にある可動性の膜。焼肉で言うところの「さがり」

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