最後に心筋梗塞について書きたいと思います。20年以上急性心筋梗塞の患者さんを診てきましたが、この病気で亡くなる方は本当に少なくなりました。
でも、おそらく心筋梗塞になる人自体は増えていると思います。
循環器内科医ががんばったおかげだぞと胸をはりたいところですが、20年前の循環器内科医もがんばっていたはずで、そう考えると残念ながら末端の医者の努力はあまり関係ないのかもしれません。
まあソフト(治療法の確立)とハード(心臓の血管を再開通させるための管や風船、ステント、薬剤)がそろ って進歩したおかげだと思います。
先日、松山千春さんが不安定狭心症で緊急冠状動脈形成術を受けたそうです。
まあこれだけ漢字が連なると、普通の人は読む気をなくすと思いますので 言いかえますと、「心臓の血管が詰まりかけたので、大急ぎで血管を広げる 治療 を受けた」ということになります。
さきに書きましたが、心臓の血管が完全に 詰まってしまうと心筋梗塞になるわけですから、その一歩手前までいったということです。
どうも血管の配置、栄養の分配法、緊急時の対応などをみると人体は「一に脳みそ、二に心臓、三四がなくて五に呼吸」を大事にしているようです。
ただ脳と心臓では求められているものが違いまして、脳は瞬発力が必要ですぐにエネルギーになる糖で動き、心臓は持久力が持ち味で一分子で多くのエネルギーが得られる油によって動いています。100m走とマラソンの違いのようなものです。
小児が時折見せてくれる奇跡的な例外を除き、脳血流が遮断されると4-5分で脳死に至ります。
それに対し心筋の場合は、血流が遮断されても数時間はもちます。
ですから心筋梗塞をおこしても数時間(8時間程度:諸条件によりばらつきあり)以内に詰まった血管を広げられればダメージが少ないということになり、この数時間のことを「ゴールデンタイム」と呼んでいます。
おそらくこの時間は金(ゴールド)に相当する、時は金なりという意味とおもわれます。
まあ命はお金であがなえませんから「ライフタイム」とでも呼んだ方がいいかもしれません。
心筋梗塞は激痛ですからたいていの人は発症後すぐに来院されますが、なかには我慢する人もいます。
けれどもいくらタフな心筋も、時間が経てば徐々にダメージをうけますので、一刻を争って中核病院(市内では王子病院か市立病院)に行くべきです。
先に「狭い庭でもそれがかえって幸いなこともある」と書きましたが、日本のように狭いところに人口が密集しているのは、救急の場合は吉とでるようです。
山間部でもまあまず間に合いますので、あきらめずに急ぎましょう。
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