2008年6月30日月曜日

塩の話③

海から陸に動物が進出したと言葉にしたら簡単ですが、さきの塩に限らず環境の変化は相当大きなものであったはずです。
「水と塩」の世界から「酸素と窒素」の世界へ、そんなに急に適応できるものなのでしょうか。

実は陸上に進出した際、脊椎動物は(当時はまだ脊椎が発達していなかったようですが、今でいうところの脊椎動物)体内に海の環境をそのまま持ちこんだことが知られています。つまり各自、携帯用「海」を持ち歩いているということです。

これは現代の脊椎動物、もちろん人類にもそのまま受け継がれています。

さてそれでは、携帯用「海」とは何か。それは大まかにいえば、細胞以外の部位ということになります。

たとえば血液、あと血管の外でかつ細胞の外でもある部分(これをサードスペース:第三の場所と呼んだりします)が相当します。

冒頭で血液の成分のうち最も多いのは塩だ、と書きましたが「海」なんですからあたりまえです。

濃度としては約1%です。ところが現実の海の塩分濃度は約3%で3倍の開きがあります。
おいおいそれじゃ話が違うじゃないかとなりますが、ご安心ください。4億年前の海は今の海に比べて、3分の1の塩分濃度であったと考えればつじつまが合い ます。
4億年の間に海底で石臼が回り続け、徐々に塩の濃度が増えていったものと思われます。あるいはひょっとしたら、陸上の岩塩が海に流れ込んだせいかも知れません。

そんなこんなで携帯し続けて4億年、昔とちっとも変わらぬ品質を保ち続けているわけですが、本家の「海」のほうが変貌をとげてしまい、昔のご先祖様なら(といっても爬虫類ですが)、携帯「海」が少なくなってくる、つまりは脱水状態になれば最寄の海の水を飲めば済んだのでしょうが、いま人間が小船で大洋をさまようと、まず飲み水の確保が一番の問題になるわけです。

2008年6月27日金曜日

塩の話②

生物にとって塩分摂取が必要かどうかはともかく、生体内において塩(特にナトリウム)はいろいろ働いています(浸透圧の維持、神経情報伝達、心臓の収縮など)から、体内に塩の存在は欠かすことができません。

で今を去ること4億年、海から陸上へ動物が進出してきたそうです。

海の生物はまわりが塩だらけですから、好きなだけ取り込んで余った分は排泄すれば済むわけですが、陸上となるとそうはいきません。
塩分の排泄は極力最小限にとどめ、手の届く範囲の塩分を貪欲に取り込まなければならなくなります。
そして塩の排出をけちるために腎臓という臓器が発達し、取れる塩分を取りこぼさないために塩味をおいしいと感じるように進化したというわけです。

それでも、岩塩のない山の中まで進出すると塩分の取り込みは限りなく少なく なりますから、塩分の排泄も限りなく少なくしなければなりません。

そのため腎臓にRAAS系というホルモンシステムが発達しました。
これは、捨てられそうになった塩をもう一回体内に引き戻し、血圧と腎臓(糸球体)の内圧をあげる作用があります。
これで食物以外からの塩がまったく無くても、生きていけるようになったと思われます。

といったように陸上生物は、塩分を節約して大切に扱うように進化し、それを遺伝子にきざんでいます。

人類は500万年前に出現したそうです。
さきのサラリーの語源の話が古代ローマ帝国で紀元前後、電気やイオン交換膜は比較的最近の発明ですので、塩が貴重品ながらも手に入るようになってから約2000年、安価な塩が手に入るようになったのは100年かそこらのことと思われます。
全体のスケールからみて100年や1000年の誤差は大目にみてもらうとして、塩が豊富になり、むしろ塩の毒性(高血圧、腎障害)から体を守るため塩を減らす方向(塩味をまずいと感じたり、尿にたくさん塩を混ぜて排泄する)に進化し、それを遺伝子にきざむには時間がなさ過ぎたのです。


で21世紀の現在、いくらでも塩分摂取が可能な環境にあるにもかかわらず塩味をおいしいと感じ、腎臓は一定量以上の塩分の排出を拒み、かくして体内に塩がたまり、高血圧や腎障害の危険にさらされることになったわけです。

ですからもうすこし時間を稼いで、あと100万世紀くらい経てば塩味を毛嫌いするように進化するかもしれません。
そうなりますとラーメンなんかも味噌・塩・醤油じゃなく酢・辛子・青汁味あたりが定番になるのではないかと思います。

2008年6月18日水曜日

塩の話①

高血圧などで病院にいくと判で押したように「塩分を控えましょう」といわれます。
またそうでなくても「塩分のとりすぎは体に良くない」とよく耳にすると思います。
しかし血液の液体成分で最も多いのは「NaCl」つまり塩です(もちろん「H2O」を除いての話ですが)し、なにより適度に塩味の効いた食べ物はおいしいです。


祖先の動物から人間への過程で苦いものは毒、酸っぱいものは腐敗物、おいしいものは体に必要なものとして取捨選択し生き残り進化してきたわけですから、おいしく感じかつ体の構成成分である塩は、重要な物質なのではないのでしょうか。
結局、現代において塩をどう捉えたらいいか、について今回は書いてみたいと思います。

テレビのクイズ番組などで、「サラリー(salary)の語源は塩(ラテン語:sal)からきていて、昔は塩が貴重で給料を塩で払ったため」なんていう話を聞くことがあります。
これには異説もあるようですけれど、古代において塩が貴重であったことは間違いないようです。
いまではイオン交換膜と電力を用いてわりと簡単に塩を作ることができ、おかげで大変安く手に入ります。

見方を変えれば、お酒やタバコはのめりこむと結構家計を圧迫するので経費上の理由(あるいは奥さんからの強い圧力)で自制する場合もあると思いますが塩の場合は経済的抑制効果を期待するのは無理ということになります。
ですから奥様が「今日は塩分控えめにしました」と言ったら、それはけちんぼ精神から言っているのではなく心から夫を愛しているか、自分が高血圧といわれたか、塩と砂糖を間違えたかのいずれかと推察されます。

イオン交換膜も電力もなかった昔は、人力と太陽光と火力頼みだったでしょうから、当然コストがかかって貴重品になります。
ただそれも知恵をもった人類だから、塩を作り、容器に入れ、塩の無い地域に運ぶことができたのであって、人類以外の陸上動物にとっては、地上に存在する塩分は(もしそれがその生物にとって必要であるならば)限りなく貴重な物質ということになるでしょう。
では人類などの陸上生物において、塩分摂取は必要なものなのでしょうか、
それとも無ければ無いで生きていけるものなのでしょうか。

2008年6月16日月曜日

尿酸と痛風④

人間以外の多くの生物は、尿酸を無害な別のものに変えてしまう酵素をもっていて、人間のほかにこの酵素を持たないのは、多くの霊長類、鳥類と一部の犬だけだそうです。
ですから猫や馬や牛は痛風にはならないということです。
松坂牛だったか、霜降り肉にするためにビールを飲ませるなんて聞いたことがありますけれど、その牛たちがおかげで痛風になるんじゃないかなんていう心配はしなくていいわけです。

人間においては男も女もこの酵素を作ることは出来ないのですが、前にも書いたとおり女性はほとんど痛風になりません。

ただ、さしもの女性も閉経後は痛風になることがあります。
閉経というのは女性ホルモンが出なくなった状態ですから、この女性ホルモンが尿酸を下げて痛風になりにくくしているのではないかと考えられています。

さて尿酸の高い人がどのようなきっかけで痛風発作をおこすか、を最後に書きましょう。

尿酸が高くなると細い針を束ねたような形をした、尿酸結晶というのが関節の内側の膜にたまってきます。
これが膜に埋まっている間は痛みはありません。
ちょうど不発弾が土中に埋まっているようなものです。
でこの尿酸結晶がポロリと関節腔の中にまろびでてくると各方面を刺激して痛風発作を引き起こします。

膜に埋まっている結晶が大量になれば、ちょっとしたことで出ていくでしょうし、急に激しい運動をしたときにその物理的刺激で出る場合もあります。
注意しなければならないのは、いままで血中尿酸の高かった人が急にさげると痛風になるあるいは悪化するという一見、矛盾した現象があることです。
これは膜に埋まっている結晶が、血中尿酸が下がることによりサイズが小さくなり、関節腔内に抜け落ちるためとされています。
ですから例えば、尿酸を下げる薬を飲んでいる人が、痛風発作が起こったからといって勝手に薬の量を増やすと、かえって発作は悪化します。

2008年6月12日木曜日

尿酸と痛風③

前ふりでビール党は尿酸があがりやすいと記載しましたが、そろそろそこら辺の話を書きたいと思います。
ほとんどすべての飲食物には尿酸の元となるプリン体が含まれているのですが、ただその濃度にピンキリがありビールはピンの最有力候補です。
またアルコールは体内で尿酸に変わってしまいますのでダブルパンチになります。

おなじお酒関係で比べて見ますとおおまかに言って、日本酒、ワイン、ウイスキーなどにくらべビールは10倍、25度焼酎は10分の1のプリン体を含んでいます。
つまりビール対焼酎なら100対1となります。さらに一部の虎さんを除いて焼酎は割って飲むことが多いですから、ビール対6:4のお湯割り焼酎なら100:0.6という計算です。

別にビール会社が憎いわけでも、焼酎メーカーが気を利かせて「あわもり」や「いいちこ」を送ってくるのを期待して書いているわけではありませんが、尿酸が高い人はビール要注意です。

それでもビール好きの人は、いちるの望みとともに問うかもしれません。
「発泡酒ならどうなんだ」と・・・


残念ながら発泡酒でもあまり事態は好転しません。発泡酒中のプリン体はビールより多少低いようですが、それでもやはり他のアルコールよりは高目です。
ですが中には「プリン体○○%カット」を売りにしている発泡酒もあるようですから、そういうのを利用するのもいいかもしれません。
第三のビールにつきましてはよくわかりません。

ただ、くどいようですが尿酸の元となるプリン体は多くの食品に含まれ、アルコールは尿酸に変化しますのでもちろん、ビール・発泡酒をのまなきゃ何してもいいというわけではないのです。

2008年6月11日水曜日

尿酸と痛風②

さて肝心の痛風です。
尿酸が高いと痛風になることがあります。でもたんに尿酸が高いだけでは特に自覚症状はありません。
血液中の尿酸の高低を感じられるほど、私たちの体は敏感には出来ていないようです。

かたや痛風になりますと、どんな鈍感な人にも耐えがたい痛みを発します。
こちらは読んで字のごとく、風がそよと当たっただけでも痛みが走るという、まことに痛ましい事態に陥ります。

私がむかしむかし医学生だったころ、産科の授業で講師が半ば冗談で言っていたのですが「人間の3大疼痛は心筋梗塞、消化管穿孔、出産」だそうです。
あとで述べますが、女性はほとんど痛風になりません。また皆さんご存知と思いますが、男性はほとんど出産しません。
ですから男性に限れば3大疼痛は「心筋梗塞、消化管穿孔、痛風」ということになるのでしょうか。
話がそれました。

この痛風の痛み、なかなか特徴的でそのポイントを押さえていれば容易に見当がつきます。

初回発作、つまり人生ではじめての痛風発作の場合、かなりの確率で①足の親指の付け根が痛み、はじめなんか痛いなあという感じから②数時間後には「かぜそよ」の激痛に見舞われます。
まあ普通はこの時点で病院に駆け込みます。

駆け込んでいただければ消炎鎮痛剤を処方しますので、けちけちせず痛みが治まるまでふんだんに使用し、仕事に行くことも可能です。まあ、お仕事がマラソンとか登山家などの場合は無理かもしれません。

ところがなかには大変我慢強い方がいらっしゃいまして、ただひたすら耐える。

すると③一週間から十日くらいでいままでの苦しみがうそのように消え、まったくなんともなくなります。 
この③を痛風の救いと見るか、問題点とみるか意見の分かれるところで、まああっさりよくなるんならそれに越したことはないんじゃない?と思われるかもしれませんが、あつものに懲りてなますを吹くのは最初のうちだけで、喉もと過ぎれば熱さを忘れるとばかり、また暴飲暴食の生活に舞い戻る場合が多々あります。

かくして二回目の痛風発作に見舞われることになるわけです。

2008年6月10日火曜日

尿酸と痛風①

北海道にも、ビールのおいしい季節がやってきました。
しかし、せっかくのビールの季節に水を差すようですが、ビール党の人には尿酸が高い人が多いのです。で、第一回として尿酸と痛風について書いてみようと思います。

まず予備知識として「尿酸」というのは「血液中の尿酸の濃度」のことをいいます。で尿酸が高いと、ちょうど塩水を煮詰めると塩の結晶ができるように 「尿酸結晶」というのが関節などに溜め込まれます。

また尿酸は腎臓から破棄するんですが、この排泄量が多かったり尿が酸性だったりすると、尿酸結石という石(尿結石)をつくります。これが腎臓と膀胱のあいだにある尿管に引っかかったりします。

じゃあ、「尿酸」ってなんでしょうか。読んで字のごとく「すっぱい尿?」ではありません。尿酸のルーツはあの「DNA」にあり、そのなかにある「プリン体」というものが尿酸に変化します。ということでDNAをたくさん食べると尿酸があがる、逆に言えば尿酸を下げるためにはDNA摂取を控えればいいとなりますが、なかなかそう簡単にはいきません。
なぜなら食べ物というのはほとんどすべて、肉にしろ、野菜にしろ、納豆菌にしろ、細胞から出来ており、細胞の中には必ずDNAがあるからです。
そういうことで結論は「尿酸を下げるためには食事量を減らそう」となります。

ちょっと難しめにいうなら「総摂取カロリーの制限」というわけです。

むかしむかし、まだ世界中が飢えていたころは、痛風になるのはごく一部の王侯貴族だけだったそうです。

いまは「飽食の時代」ということでおいしいものが大量に手にはいるようになり、むかしむかしの王侯貴族の食生活を味わいつつ、彼らの苦痛も味わう事態になったわけで、なかなか世の中うまくはいきません。